2021年5月29日(土)講義:13:30~16:40
吉田 友子氏(慶應義塾大学 商学部 教授)
「女性のエンパワーメントとリーダーシップ講座」(E講座)の最終回である第4回目は吉田友子先生に「多様性対応コミュニケーション」のタイトルでお話しいただきました。
講義は吉田先生から受講生への「『花』と聞くと何を想像しますか?」、「『朝食』を想像してください」のエクササイズ(問いかけ)から始まり、受講生から様々な名前が挙がりました。このエクササイズによって、受講生は全員が同じものをイメージすることはないということ、自分の常識が必ずしもほかの人には通じないこと実感し、吉田先生の「コミュニケーションは個人の背景や文化的背景に大きく影響される」との話に興味深く耳を傾けていました。
吉田先生は海外で生まれ育ち、日本の大学に入学された際には大きなカルチャーショックを受けられ、その後異文化コミュニケーション研究の道に進まれました。引き続き、受講生が一人ずつそれぞれの異文化コミュニケーション体験をふまえつつ、自己紹介を行いました。受講生は、生まれも育ちも、仕事もこれまでの経験も異なる多様な人々とともにこの講義を受講することを改めて認識し、学ぶ意欲とこの講義への期待をさらに高めた様子でした。
受講生による自己紹介の後、吉田先生から「コルブの学習サイクル」や「企業の求める異文化コミュニケーション能力」についてご講義いただきました。さらに、異文化トレーニングの4つの要素である「認識」、「知識」、「感情」、「スキル」を体感するワークを行いました。
「認識」の要素では、吉田先生が写真を提示しながら「この写真の何に(どこに)着目しますか?」と受講生に問いかけました。すると、受講生からは「○○が見えます」との回答がなされましたが、吉田先生から「海外の人は『△△が見えます』と回答します」との紹介があり、受講生たちは認識するものが文化的背景によって異なること、また、それによってコミュニケーションが変化することを学びました。「開始時刻が決まっている会に何時に向かうか」のワークにおいても文化的背景によって時間認識が異なることを実感しました。
「知識」の要素では、吉田先生より高コンテキストと低コンテキストについて講義があり、日本では美徳として捉えられることもある「空気を読む」は非常に高度な高コンテキストコミュニケーションであることを認識しました。この講義をふまえ、受講生はグループに分かれて高コンテキスト・低コンテキストの差によって摩擦を感じたことがあるか、ディスカッションを行い、互いの知識を深めました。
「感情」の要素においては、吉田先生から「文化は感情レベルで感じ、良いと思うことでも違和感や受け入れられないことがある」とのお話があり、いつも身に着けている時計を逆の腕につけるミニワークから、受講生はその違和感を体感することができました。さらに、吉田先生からホフステードの4つの文化の次元について説明がなされ、受講生は今までに感じた文化摩擦を4つの次元で説明し、シェアするワークを行いました。このワークを通じて、受講生は自身の捉え方の傾向を知ることができました。
「スキル」の要素では、サンプル動画を視聴して文化摩擦をD.I.E法で分析するワークを行いました。D.I.E法とは、観察した事実を描写(Description)し、自身と相手の解釈(Interpretation)を書き、さらにそれぞれの評価(Evaluation)を書き記すことで、互いの解釈と評価を客観的に分析する方法です。受講生はこの方法を用いて、今起きている状況を把握し、2者間の解釈・評価を客観的に捉えるトレーニングを行いました。
最後に吉田先生からD.I.E法を用いて受講者自身が体験した文化摩擦を説明・分析してみてくださいと呼びかけていただき、講義は終了しました。
受講者の皆様からは、「ホフステード(4つの文化の次元)での相手と自分の理解をすることが大切であり、D.I.Eで目の前の事象だけで捉えることなく、描写したことを解釈して評価するまでが重要と理解できました。実践したいと思います。」、「仕事や家庭で、何故伝わらないのだろうと感じることがあり、講義を通して高コンテキストだらけのコミュニケーションであったことが原因だと知ることが出来ました。そして文化摩擦に対してのスキルの欠如していたことも認識できました。今後は文化摩擦について意識して行きたいと思います。」などのご感想をいただきました。
吉田先生のご講義では、例年、異文化コミュニケーションを体感・実感できるワークを多数取り入れていただき、充実した時間を過ごせたとの感想をいただいています。今年度も吉田先生の軽快なお話と笑顔で終始大いに盛り上がりました。
多様性に対応するためには、まず文化的背景、個人的背景を認識し、知識として持ち合わせておくことが大切であること、そしてそれを持って目の前の事実を描写して解釈・評価するスキルを持つことが円滑なコミュニケーションをはかるための近道であると感じた3時間でした。
文責 内藤 章江(グローバルリーダーシップ研究所 特任講師)