2022年1月29日(土)講義:13:30~16:40
汐崎 浩正 氏(汐崎法律事務所 所長弁護士)

汐崎法律事務所 所長弁護士の汐崎浩正先生に「これからの女性リーダーが知っておきたい法律」のタイトルで1月29日(土)、2月5日(土)の2日間ご講義いただきました。この講義は女性リーダーとして知っておきたい法律知識の習得を目的としています。受講者は法律の基礎を学びたい、社内で相談された際にアドバイスできるようになりたい、ハラスメントが起こりにくい職場づくりをしたい、など様々な理由を持った11名です。汐崎先生は徽音塾開設(2014年度)から継続して法律にかかわるご講義を担当いただいており、例年豊富な資料をご準備くださいます。また、弁護士としての豊かなご経験をもとに、難しい法律用語や制度の内容を丁寧にわかりやすく身近な例えを用いてお話しくださる講義スタイルは毎年受講者の好評を得ています。

2021年度「これからの女性リーダーが知っておきたい法律」の第1日目は、コンプライアンス実現の仕組み、公益通報者保護法(内部通報制度)、独占禁止法、労働法規と各種制度のうち労働基準法についてご講義いただきました。

コンプライアンス(Compliance)は「法令順守」と和訳されていたこともありますが、汐崎先生から「法令を遵守するのは当たり前ではないか、なぜわざわざコンプライアンスの制度確立が必要なのか、コンプライアンスが何のための制度であるか」との問いかけがありました。その問いかけに対して、汐崎先生は講義の中で様々な事例を挙げつつ、コンプライアンス制度を確立することで不祥事が発生した後も迅速な対応や行動が可能となり会社や従業員を守ることにつながるため、ビジネスリーダーにとって「コンプライアンス」は重要なキーワードになる、と説明されました。

続けて、汐崎先生より「コンプライアンスを実現するためには、会社の従業員による内部告発を積極的に評価し、会社の不正行為を是正する必要がある」との説明がなされ、公益通報者保護法(内部通報制度)についてご講義いただきました。内部告発(内部通報)はその会社のためだけではなく社会(公益)のためにもなる、とお話しされたのち、実際には勇気を出して内部告発を行った従業員に対して会社が不利益な報復措置を行う事例が後に絶たない、とのお話がありました。不正行為はもちろんよくないことですので内部告発は積極的に評価すべきですが、内部告発者への報復事例が紹介され、通報者も会社も幸せになれないこともある、ということを知りました。しかし、最新の改正法では従業員300人超の企業とすべての行政機関に対して内部通報窓口設置など対応体制の整備が義務化されるとのお話をお聞きし、通報者が保護される体制は少しずつ整備されている様子をうかがい知ることができました。

独占禁止法については、私的独占、不当な取引制限、不公平な取引方法を禁止する法律であることが説明され、コンプライアンスとのかかわりについても説明いただき前半は終了しました。

休憩をはさみ、後半は「労働法規」について学びました。後半の講義を始めるにあたり、汐崎先生から「労働法」という法律は存在せず、多くの法律が合わさって労働法という法律分野が構築されているとの説明がなされました。本講義では、多くの法律の中でも女性リーダーとして知っておきたい法律として第1日目に労働基準法、第2日目に育児・介護休業法、男女雇用機会均等法、パートタイム・有期雇用労働法、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法、障害者雇用促進法、障害者差別解消法、労働審判法、女性活躍推進法についてご講義いただきます。

労働基準法は1947年に施行された法律であり、労働条件や賃金、労働時間や休日、有給休暇について規定されています。各企業における就業規則はこれに基づいて作成されています。第1日目は賃金や契約期間(無期労働契約への転換など)、解雇にかかわる知識を学び、終了しました。講義終了後には受講者から様々な質問がなされ、汐崎先生は丁寧にこれまでのご経験や過去の事例を用いて回答されました。

受講者からは、「コンプライアンスについて、企業トップにとっても社員にとっても組織において重要な事項であると認識していますが、一方で企業トップや管理者はリスク管理や対外的な応対に追われ、現場においては、『コンプラ疲れ』になり、本来組織が果たすべき社会的責任及び企業目標が薄れている場合も散見されます。組織全体が法律を守りやすくするための環境、文化づくりが必要であると再確認しました。」、「判例や関連事例もあって固いイメージがあった法律を身近に感じることができた。」などの感想をいただきました。

受講者は自身が所属する会社や身の回りで起きていること、そして自分自身に照らし合わせながら講義を聞いていたようです。法律について知るほどに活用したくなること、また、活用しても幸せになれない場合もあること、そして改正を繰り返してよりよい法律が作られていることを学びました。さらなる学びを深めたい気持ちを強めた受講生たちは、第2日目の講義もとても楽しみにしているようです。私たち事務局も引き続きの学びを楽しみにしています。

文責 内藤 章江(グローバルリーダーシップ研究所 特任講師)