講義の前半は、前回講師の鹿住先生による「起業家活動のプロセス」に関するお話から始まりました。事業機会を発見し、意思決定を経て資源を集め、戦略を立て、組織化を進めて遂行するという一連の流れが示され、起業という活動が段階的に整理されていることを改めて実感しました。デザイン思考については、潜在的なニーズを見つけ、問題を定義し、解決策を創造してプロトタイプを作り、テストと試行錯誤を繰り返していくプロセスが強調され、単なる発想だけではなく、実際に形にして検証し続ける姿勢の大切さを学びました。

続いて、起業の考え方として「コーゼーションモデル」と「エフェクチュエーションモデル」が紹介されました。前者は既存の枠組みの中で持続的に発展していく考え方、後者は新しい枠組みを生み出す破壊的な発想で、偶然の要素も取り込みながら進んでいくというものです。この対比によって、起業の道筋が一つではなく、多様であることを理解できました。また、顧客価値の創造については、単にモノやサービスを提供するのではなく、顧客の課題をどう解決し、他サービスとどう差別化するかが重要だと学びました。さらに、ビジネスモデル構築では「誰に、何を、どのように、いくらで提供するか」という問いを軸に、実際の企業モデルを参考に具体的な仕組みを考えることができました。

後半を担当されたのは、駿河かおり先生です。自身の会社の紹介と具体的な事例を通じて学びを深めました。経営理念や事業内容を踏まえながら、単に機能を強調するのではなく、顧客にとっての価値を示すことの重要性を繰り返し強調されました。機能を「顧客にとっての魅力」に翻訳し、感情や行動の変化を生み出すプロセスは特に印象的でした。商品開発では市場調査やユーザーインタビューを重ね、小ロットで試作し検証を繰り返すことで、確かな価値に近づけていったそうです。販売チャネル戦略として、商品が完成する前からファンを作り、SNSを通じて価値を発信し、リアルな接点を持つ取り組みの大切さも実感したと力を込められました。

最後の質疑応答では、「人とのつながりが最も大切」という言葉がキーワードになりました。起業や事業活動は一人で完結するものではなく、多くの人との協働や信頼関係の中で形作られるものだという視点は、今日の学び全体を貫くテーマでもあったように思います。