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2020年8月30日(日)にオンラインにて第10回先端科学セミナーを開催いたしました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえ、前日の第23 回リケジョ未来シンポジウムに次ぐ当機構2回目のオンラインイベントとなりました。昨日と同様に、今までお茶大まで足を運ぶことが難しかった全国各地の沢山の方々にご参加いただくことができました。

今回は「研究は楽しい!」をテーマにして、お二人にお話していただきました。各先生のご講演の後にそれぞれ質疑応答の時間を設けました。質疑応答では、講演中あるいは講演後に、参加者の皆様に質問をチャットに書いていただきました。質問を書いた参加者は、マイクを通して自分の言葉で講演者に直接質問を投げかけました。講演者と参加者とのやり取りが活発に行われ、対面型のセミナーと同じくらい、熱気あふれる時間となりました。

最初の講演は、伊村くらら先生(お茶の水女子大学 理学部 生物学科 講師)「『シャボン玉』からつながるナノサイエンス」というテーマでお話いただきました。私たちの生活に身近な「界面活性剤」は、水に馴染む部分と油に馴染む部分の両方を兼ね備えた分子構造の集合体です。その目に見えない分子を顕微鏡で観察しながらコントロールすることで、狙い通りの分子膜を作ることが可能だそうです。伊村先生が行っている、光やpH、温度をコントロールして分子の集合体(分子膜)を作る最前線の研究をご紹介していただきました。作り上げた分子膜を利用して今までにない性質をもつナノ材料の開発が可能になるそうです。目には見えない小さなスケールのお話でありながら、わかりやすくお話していただき、化学の無限の可能性を実感しました。

佐藤敦子先生(お茶の水女子大学 理学部 生物学科 助教)には「無脊椎動物と脊椎動物のあいだ:脊椎動物の背中は無脊椎動物のお腹?」というテーマでお話しいただきました。佐藤先生の研究対象である半索動物は、翼鰓類と腸鰓類に分類されることを学びました。私たちに馴染みのない生物ゆえ、参加者からは「何を食べているのか?」「目はあるのか?」など活発な質問が寄せられ、中高生の皆さんが半索動物に興味を持ってくれたことを感じました。無脊椎動物のお腹と背中の軸を逆にしたのが脊椎動物であるという「背腹逆転説」についてもご紹介いただきました。無脊椎動物と脊椎動物の中間的特徴をもつ半索動物の研究が進むことで、「背腹逆転説」の議論が今後活発になることが期待されているそうです。佐藤先生の軽快な話術も相まって、参加者の多くはまだまだ生態について未知な部分の多い半索動物に魅了されてしまいました。