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2021年1月10日(日)にオンラインにて先端科学セミナースペシャルを開催いたしました。今回は「大学の研究をのぞいてみよう!」をテーマにして、奈良女子大学とお茶の水女子大学の先生にそれぞれ行っている研究についてお話いただきました。各先生のご講演の後にそれぞれ質疑応答の時間を設けました。質疑応答では、参加者がマイクを通して質問を投げかけることで講演者と参加者とのやり取りが活発に行われました。

最初の講演は、小路田俊子先生(奈良女子大学 理系女性教育開発機構 特任助教(物理学))「弦理論と場の理論」という題名でお話いただきました。先生は「場」という概念に興味を持たれ、素粒子理論をご専門に研究されています。講演の中では、物理学者が空間概念をどのように考えてきたのかという理論の変遷をニュートンの時代にまでさかのぼって教えていただきました。物理学の分野では「素粒子標準模型」と「一般相対性理論」という2つの理論の間にある矛盾の解決方法が長年研究されているそうで、その解決の糸口として素粒子の中に弦(ひも)があると捉える「弦理論」が注目されています。先生は現在弦理論について研究なさっており、弦理論によって矛盾していた「場」の概念がどこまで成立するのかを知りたいとおっしゃっていました。また先生は理論物理が専門のため、ペンと計算用紙とパソコンさえあればどこでも研究ができるそうで、先生が研究で用いている計算ソフトの画面を実際に見せていただきました。ソフトに式を入力すると一瞬で計算結果が出たりグラフを書いたりする様子がよく分かりました。

次の講演は、市育代先生(お茶の水女子大学 生活科学部 食物栄養学科 講師)「健康のために必要な脂質:欠乏するとどうなるの?」という題名でお話いただきました。脊椎動物は二重結合を複数有する多価不飽和脂肪酸の合成酵素を持っていないため食から補う必要があります。先生は食事由来の多価不飽和脂肪酸が欠乏するとどうなるのか?ということに注目して研究なさっており、講義の中では先生が行った2つの実験について教えていただきました。1つ目のマウスを用いた実験では、遺伝子操作によって脂肪酸合成酵素の1つを欠損させたマウスに多価不飽和脂肪酸欠乏食を与えると皮膚炎や脱毛などの症状があらわれることが分かりました。2つ目の高齢者施設で提供されるペースト食を用いた実験では、ペースト食を食べる高齢者の方ほど低栄養有病率が高く、ペースト食に含まれる栄養を調べてみるとEPAやDHAという多価不飽和脂肪酸が著しく低いことが分かりました。以上より多価不飽和脂肪酸は健康を維持するために必要な脂質であり、今後は脂質に関する新たな栄養療法の確立に貢献したいとおっしゃっていました。

お二人の先生とも実際の研究で用いられている計算ソフトの画面、マウスや実験装置などの写真を用いて研究の様子を分かりやすく説明してくださいました。そのためオンライン上でありながら、まるで研究室見学をしているかのような気持ちになり、参加者の方々にとって大学での研究の様子を深く理解できた有意義なセミナーとなったのではないかと感じました。