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2021年8月22日(日)に、オンラインにて奈良女子大学と合同でリケジョ-未来合同シンポジウム2021「サイエンスの学びから将来の夢へ」を開催いたしました。オンラインでの開催ということで、全国各地の多くの方にご参加いただきました。奈良女子大学理系女性教育開発共同機構の山下靖教授に開会のご挨拶をいただきました。講演の部は、文部科学省初等中等教育局 水戸晶子様、大阪大学 金英子教授にご講演いただきました。司会進行は、本機構 機構長の加藤美砂子教授が担当いたしました。

講演の部

水戸晶子様(化学) 文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課

『自分の核ってなんだろう?』

理系に進学して博士課程を修了し、現在は文部科学省でご活躍されている水戸さんからは、進路を選ぶときにどんなことを大事にしてきたのか、そして自分の好きなことや大切にしていることの見つけ方について教えていただきました。中学・高校時代から理数科目に関心があったという水戸さんは、お茶の水女子大学化学科、そして博士前期課程(修士)・後期課程(博士)に進学されました。学生時代は興味のあることに積極的に取り組んできたそうですが、その経験がその後の進路や現在の仕事の選択に大きな影響を与えたそうです。物質・材料研究機構でのインターンシップでは最先端の科学に触れ、研究の面白さを感じると同時に、研究現場の課題を実感したそうです。また現在のお仕事とも関わりの深い教育格差に興味をもつきっかけになったのは、教職課程での教育実習だったそうです。
博士後期課程後は文部科学省に入省された水戸さんですが、進路に悩んだこともあったそうです。そのときに自分が好きなことや大切にしていること、自分が歩みたい将来像について書き出してみたことで、文部科学省での仕事が自分の”核”とマッチしていると気づいたそうです。文部科学省では、科学技術・学術政策局政策課を経て、初等中等教育局情報教育・外国語教育課という部局での業務にあたっているそうです。研究現場を見てきた経験や、研究やインターンシップなどの経験で培われた異分野理解の姿勢や調整力が業務に活きているとのことでした。これまでの自分の経験の中から自分が感じたことや身につけたことの一つ一つが将来の自分を描くヒントになるのだと感じました。最後に、理系進学を考えている中高生の皆さんに向けて『将来について考えるときは先入観に囚われずに、自分が何を大切にしているのか、人生で何を成し遂げたいのかをじっくり考えてください。色々なことにアンテナを張って幅広い経験をすることで、自分の核が見つかると思います。』というメッセージをいただきました。

 

金英子様(数学) 大阪大学 全学教育推進機構 教授

『大事なことは「好き」かどうか~数学を学ぶということ』

奈良女子大学を卒業され、現在は大阪大学で数学の講義と研究を行う金先生からは、自分が好きなことを伸ばしていこう、というお話をしていただきました。ご自身の小学生時代を振り返ると、周りの人よりできるのが遅いことが多かったそうです。人よりもできるのが遅いことはとても悲しかったという金先生は、放課後は鉄棒、楽器、国語など、学校でできなかったことを練習する日々を送っていたそうです。その中で、自分には練習を重ねると誰よりもできるようになることがある一方で、どうしても上手くできるようにならないものもあると気づいたそうです。この経験から「分からないことが分かり、できないことができるようになる。その喜びを積み重ねることが原動力になる。」ということ、そして野球のイチロー選手の言葉を引用して「遠回りすることでしかたどり着けないこともある。自分に向いていることよりも好きなことをやるほうがいい。」ということに気づいたそうです。そして学生時代に恩師との出会いもあって数学の楽しさを知って数学の勉強や研究を続けたいと思い、大学の教員を目指すことにしたそうです。数学の楽しさを伝える教員という仕事や、研究者同士でコミュニケーションをとりながら進めていく研究という仕事にやりがいをもって楽しく取り組まれているお話はとても印象的でした。
最後に中高生の参加者に向けて「数学は紙と鉛筆さえあれば場所を選ばずどこでもできる、学ぶチャンスが誰にでもある学問です。図書館に行って面白そうな本を手に取って読んでみよう。思いがけない本との出会いが大きな力になって、自分が好きなことを見つけるきっかけにもなります。」との言葉をいただきました。さらに、楽しみながら数学の勉強をしてくれたら嬉しいということで、素数の世界を表す「素数の絵」というパズルをzoomのチャット機能を使ってプレゼントしていただきました。

 

質疑応答

お二人のご講演の後、質疑応答の時間を設けました。講演中あるいは講演後に、参加者の皆様に質問をチャットに書いていただきました。質問を書いた参加者は、マイクを通じて自分の言葉で講演者に直接質問を投げかけ、オンライン開催でありながら対面と変わらず活発な交流ができました。今回は将来の進路の決め方や苦手な科目の勉強方法など、たくさんの質問が寄せられました。講演者のお二人が一つ一つの質問に丁寧に回答してくださったことで、参加者の悩みを解消するヒントがたくさん詰まった濃密な時間となりました。

 

懇談会(ブレイクアウトセッション)

閉会の後、希望者のみで懇談会を行いました。ブレイクアウトセッションのツールを用いて2つの部屋を作り、講演者が1人ずつ部屋に入って、参加者との交流の場を設けました。それぞれの部屋の司会進行は、本学理学部生物学科3年生の池田陽香さんと本学大学院ライフサイエンス専攻修士1年生の大堀智博さんが担当しました。講演の部よりも少人数での実施となり、より講演者と参加者の距離が近く、ときには会話するような形で盛んなコミュニケーションが行われていました。