2021年2月27日(土)講義:13:30~16:40
汐崎 浩正氏(汐崎法律事務所 所長弁護士)

例によって前回のリアクションペーパーで寄せられた質問について回答下さった後、本日のラインナップは金融商品取引法(金商法)、コンプライアンス、また労働法規と各種制度の内、労働基準法の話題の半分まででした。
回を重ねるごとに濃厚な話題と資料。年々変化する法律の最新の姿をご紹介下さる汐崎先生は、いつも講義当日の朝刊までチェックしてから臨んで下さいます。いつもありがとうございます!

さて、まず金融商品取引法については、インサイダー取引規制について教えていただきました。
法律の条文についてご紹介いただいた後、会社関係者(インサイダー)とは?という話題から、どこまでが取引禁止の対象になるかについて分かりやすく教えていただきました。たとえば自分のバーのお客さんが情報を耳打ちしてきたら?タクシーの運転手さんがお客さんの話を偶然聞いてしまった場合は?わずかな状況の差で違法行為になる・ならないが定まるのは怖いなあと聞いておりました。受講者の皆様もこの話題に興味が強かったらしく、質問が相次ぎました。
また重要事実とは?ということと、その「決定」についての意味、また重要事実の公表についてもご解説いただいた上、インサイダー取引を防止する管理体制についても紹介していただきました。

次にコンプライアンスについては、企業のコンプライアンス制度の確立の必要性という一見当たり前のことについて、様々な企業不祥事を挙げつつご解説下さいました。話題は日本社会の弱点にも及び、文化が事件や法律の性質に与える影響について、一般人としてももう少し注視すべきかと考えておりました。
普段は企業のイメージ形成・戦略に関わるものとしてぼんやり認識している企業倫理、フェアトレード、ESG投資、SDGsについては、今年度の徽音塾でも部分的に取り上げられた話題もあり、これも興味深く聞いていらした方が多かったようです。ファッションや食をはじめ、最近は様々な場面でこのような話題に触れますが、法律の観点から捉えた解説を伺ったのは、今回が初めてという方が多かったのかもしれません。
公益通報者保護法(内部告発)については、聞いていて苦しくなるような会社による報復の事例や、最新の改正法まで教えていただきました。それに比べると、わが身に関わる場面が圧倒的に多い個人情報保護法とマイナンバー法のお話では、日頃なんとなく大丈夫だろうと、オンラインの同意書を読み飛ばしてばかりだなあと、ちらっと不安がよぎりました。先生のお話によると、海外ではこの手の文章では大事なところが目立つよう、赤字になっていたり大文字になっていたりするそうです。これも文化の違いなのでしょうか。個人情報漏洩の例に挙がっていた有名な某事件については、講義終了後に「私もこれ、当事者です」、「私も!」という声が複数上がり、本当に大規模な事件だったのだな、法律は生活に欠かせないなとつくづく思いました。

最後に、いわゆる労働法(そういう名前の法律は存在しない)の内、労働基準法の話題に入りました。
労働法の歴史から始まり労働基準法の中の性差に関わる内容や、労働者とは?ということを教えていただきました。「ウーバーイーツの配達員は、ここでいう労働者?」というクイズには、さすが皆様、正解率が高かったです(考えすぎて間違えた方も)!
契約期間と雇止め問題のくだりでは、大学の末端に身を置く者には身近過ぎて辛い話題もありました。また解雇の話題では、雇う側、雇われる側共に言い分があって判断が難しい問題がありそうだなあと感じました。雇う側からの質問を寄せた方もいらっしゃいました。

いろいろ、弱者として心に波風が立つ回でした。
受講者の皆様からは、「「お題目ではなく真剣に取り組む課題であることを示すことが大切」、「現場がコンプラ疲れにならないような工夫やバランスも大切」というお話が企業のコンプライアンス担当として身に沁みました。忙しい社員に依頼する必要があり、重要性を理解して取り組んでもらうことが難しいと感じています」、「個人情報保護法に関しては、私もお客様にDMを送る作業をするので、確認しながら管理したいと思います」、「法律の知識については、一度得たら終わりということはなく、それを更新し続けていくことが必要になると感じました」などとご感想をいただきました。

さて、次回はあっという間に第4回、2020年度徽音塾の最終回です!
内容が今までに増してたっぷりと先生から予告もいただいております。お楽しみに!

文責 森 暁子(グローバルリーダーシップ研究所 特任アソシエイトフェロー)