2021年2月27日(土)11:30~13:00
菅谷 聡子氏(製薬会社管理職、キリマンジャロの布と石のブランド“impatiens(インパチェンス)”代表)

菅谷氏は日本に身を置き、大企業で働きながら、タンザニア(キリマンジャロ)でソーシャルビジネス立ち上げのサポートを開始されたところです。「朝日新聞」(2020年11月22日号)の「ひと」欄にもその活動が紹介されました。
今回はこの新しいプロジェクトについて、世界中を旅した経験、その中からキリマンジャロを選んだ理由と今後の展望について、目にも鮮やかな写真をたくさん示しながらお話しいただきました。

大学、大学院時代と米英で暮らした菅谷氏は、そこであらためて日本人文化を見つめる機会を得たとのお話です。当地に代々伝わるキルトの伝統に触れたり、日本の外における視点で着物や幼い頃から馴染みのあった茶道について捉え直したりする体験があったそうです。

旅を愛する菅谷氏が世界70ヶ国を巡った中でも心に響いたのが、コスタリカと東アフリカのキリマンジャロだったそうです。「How are you?」と問えば「Pura Vida(Pure life)!」
と返ってくるコスタリカ、「この大地に囲まれて、『自分が一番』なんて思っている人はいないんじゃないかな」というくらい雄大なキリマンジャロ。キリマンジャロについてはガイドをしながら地元の支援活動をしているDavidさんや、「カラフルなものって良いな」と思わせる布との貴重な出会いについてもお話しいただきました。

さて、このたびの新型コロナウイルス禍で菅谷氏が真っ先に連絡を取ったのが上記の2つの国の方々でしたが、コスタリカの山の友人たちは自給自足の生活をしているため問題がないとの返事だったのに対して、キリマンジャロの山岳ガイドやその対価で支援されている孤児たちは食料がない状態だったそうです。
そこで菅谷氏はDavidさんの「David Livingstone Group Co., Ltd」の活動に携わり、「impatiens(インパチェンス)」による支援を始めたとのお話でした。会社やプロジェクトのロゴは、社会貢献活動に積極的に取り組んでいるsibotjoy design studio (ジボットジョイデザイン事務所)のグラフィックデザイナーであるお父様に作ってもらったそうです。

David Livingstone Group Co., Ltdでは、コロナ渦で、オンラインバーチャルツアーや農業、学校(寺子屋)の建設、女性の自立支援など多くのプロジェクトを立ち上げたそうです。その中でも、キリマンジャロ発の布と石のブランド「impatiens(インパチェンス)」は収益の全額を現地の女性の自立支援と孤児支援、学校建設のために使うユニークなものだそうです。その名は山の在来種の花、現地の女性を想起させるビビッドなimpatiens kilimanjariに由来し、世界中の女性を輝かせるブランドを目指しているとのお話でした。
活動を始めてみて気づいた盲点、「理論に捉われてソーシャルビジネスを実践していくのは問題があるが、理論を振り返ってみるのも大事」であること、それに活動を展開するにあたり重要な「どんな自然環境や歴史の中で、伝統や文化が根付いたのか?」という今後の課題についても、広く思いを語っていただきました。

最後に、活力の源となっている、20代の頃のエピソードを教えていただきました。
車でアメリカを横断中、どこまで見渡しても大地しかない一直線の道で「今ならスピードを上げられる」と飛ばしたところ、車が故障。牛しかおらず携帯電話もなく途方に暮れていたところに現れたのは、サングラスのおじさんだったそうです。「襲われたらどうしよう」とこっそり小型ナイフを握りしめていた菅谷氏ですが、おじさんは真っ黒になりながら車を修理してくれて、「お礼はいらないよ。困っている人がいたら、君も同じように助けてあげてね」と去っていったとのお話でした。
この時に彼の発した「pay forward」、受けた恩を次に贈るという言葉が心に残り、私もいつかしたいな、できるかなと思われたそうです。このようなことを実践している人も多いだろうけれど、コンセプトとして広げていくことで、幸せが広がれば、と紹介して下さいました。

本日はキリマンジャロの布地の帯を結んで、着物仲間の皆さんと一緒に中継して下さいました。独特な柄なのに着物に調和した帯から、祇園祭の山鉾しかり、茶道具の裂しかり、異国の人の手による布地が珍重され、日本文化と溶け合ってきた歴史が思い出されます。また、そのお姿は、異なる地域の人々と手を取り合う繋がりも体現されているようでした。

20人近くお申込があって大盛況だった今回は、様々なご興味からご参加いただきました。社内でソーシャルビジネスの企画に奮戦中の方、着物をこよなく愛していて、ぜひキリマンジャロの布地の帯が欲しいという方…etc.「私もこんな国と繋がりがあります!」と贈り物やお土産を画面越しに見せて下さった方も大勢いらして賑やかな回でした。
参加者の皆様からは「コスタリカのこともタンザニアのこともあまり考えたことがなく、世界観が拡がりました。また、とても癒されました。菅谷さんのチャレンジ、素敵です。カラフルなアフリカの布で、世界を元気にしたいですね!」、「日本では安くて手に入りやすいものがあふれていますが、個人の思い出やストーリー性があったり何年も大事にされているところに、ソーシャルビジネスがマッチしていくのかなと思いました。またお金を頂く、配分していくという難しい部分で、会社員としての企業経験と起業家としての工夫の取り組みについてもっと伺ってみたかったです」などとご感想が寄せられました。

菅谷さん、生まれたての貴重なご活動のお話をありがとうございました。いつか菅谷さんがキリマンジャロに学校を建てるニュースを楽しみにしております。

impatiens(インパチェンス)についてはこちら
https://impatiens.handcrafted.jp/
https://www.instagram.com/impatiens_official/

文責 森 暁子(グローバルリーダーシップ研究所 特任アソシエイトフェロー)