2021年9月4日(土)講義:13:30~16:40
小坂 圭太氏(お茶の水女子大学 基幹研究院 人文科学系 教授)

かつてのネットワーキングランチでは、華麗なピアノ演奏で参加者の心を鷲掴みにされた小坂先生。ミニレクチャー後のランチタイムにも熱のこもった音楽トークを繰り広げていただき、学内関係者複数名が「小坂先生は寡黙な方だと、ずっと勘違いしていました」とこそっと話していたのも懐かしい思い出です。
そんな小坂先生が、このたびP講座にご登場です!

日頃から授業でお使いというピアノの練習室から中継して下さった小坂先生。幼少時のピアノを巡る記憶から始まり、本日どのような話題を取り上げて下さるか、まずお話しいただきました。

「音楽史関連」、「ピアノ音楽史とピアノのテクニック/ピアニズム関連」、「諸芸術との歴史的並行性(表現、という事に関する姿勢)関連」、「演奏行為とは何か、に纏わるあれこれ」、「レパートリーとカノニスム、マニエリスム関連」、「近代とグローバリゼーション関連」、「進歩史観とポストモダニズム関連」の7つの柱のもと、縦横無尽、天衣無縫にそれぞれの細かい話題について語っていただきました。
時には遠いテーマに飛び、時には前のテーマに戻り、様々に関連付けながら、あたかも演奏のように軽やかに、流れる水のごとくお話しいただきました。音楽が時代の流れや教育、哲学などとも深く関わるものであることが覗けて、圧倒されつつ新たな視野が開ける時間でした。

瞬きの内に過ぎた前半。後半では最初に、今までの話題への質問や感想も含めての自己紹介が受講者に求められました。
「『日本人は聞けていない』というのは、現在は変わっている?学校教育は?」、「言葉と音の関係は?」などという質問から、「音楽の、演奏する人がいないと成り立たないところや、人によって変化するところが面白い」、「『各々に合った楽譜を使って良い』というのが衝撃的だった」などという感想まで、興味に応じていろいろなお話が飛び出し、小坂先生はそれぞれに丁寧にコメントして下さいました。
なんとなく興味があるという方から、日常的に音楽に触れている方、出身校が音楽に強いところだったという方もいらした今回。知識の範囲はバラバラでしたが、それぞれに刺激される情報があったようにお見受けしました。小坂先生の教え子の方もいらしたのですが、「懐かしかったです。1年生の頃は、恥ずかしながら理解できていなかったところがありました」との告白に、和やかな笑いも巻き起こっていました。

その後、再びめくるめく音楽のお話の渦に受講者を引き込んで下さった先生。お話に関連して随時ピアノを弾いて下さるので、終始分かりやすく、かつ面白かったです。ドミナントの緊張と安堵の説明に関しての「起立、礼、着席」の音や(それであの音なのですね!)、刺激が強くなる程ある意味フラットになっていくという逆説の不協和音など、配布資料を読んだだけでは正直理解できなかったことも、弾いていただくことで体感することができました。やはり聞く体験は素晴らしい、早く大手を振って各種演奏会に行きたい!と切に思いました。

受講者の皆様からは、「これまで、一般教養としては音楽に触れる機会もたくさんあったにも関わらず、史実に基づき歴史的な背景に踏み込んで学ぶ機会がなく、大変興味深く受講いたしました」、「学生時代に習った音楽史の違った方面からのアプローチに考えさせられました。小坂先生のお話に引き込まれて、あっという間に時間が過ぎてしまいました。もう1日授業があればよかったな、と思っています」、「「大人としてのコミュニティに入っていくなら『自分が弾ける』ではなく『これを弾くことは可能である(自分はそれを証明する)』という意識でいてほしい」というお言葉は、ピアノ演奏以外にも広く通じることだなと社会人として生きている今、改めて身が引きしまる思いでした」などとご感想をいただきました。

小坂先生、土曜の午後に非日常の世界を垣間見せていただき、まことにありがとうございました。認識が揺さぶられて、このような世界の捉え方もあったのだと気づくひとときでした。
この世界が小坂先生には日常の世界なのだなと、言語に一義的に拠らない学問の世界の奥深さも感じました。終了後にも、何の気なしにお尋ねしたショパンコンクールについての素人質問に詳細にお答えいただき、重ねてありがとうございます(時間オーバー、大変申し訳ありませんでした)。
ぜひまた、先生のお話に圧倒される機会を設けていただきたいです(次回は演奏もたっぷり拝聴したいです!)。

文責 森 暁子(グローバルリーダーシップ研究所 特任アソシエイトフェロー)