2021年9月11日(土)講義:13:30~16:40
水村(久埜) 真由美 氏(お茶の水女子大学 基幹研究院 人文科学系 教授)

「お茶大プロフェッショナルレクチャー」(P講座)として、本学基幹研究院 人文科学系教授の水村(久埜) 真由美 先生に「ダンスの魅力を科学する~運動を楽しむと健康になる~」のタイトルでご講義いただきました。この科目は、前半が講義、後半がダンス実践で構成されています。

水村先生は、幼いころからクラシックバレエを習い、中学時代には単身でニューヨークのバレエスクールにも参加し、その後本学の文教育学部舞踊教育学科に入学されてバレエやダンスを実践的に学ぶ道に進まれました。その後は、研究者とプロバレエダンサーの二足の草鞋を履いて活動されましたが、ダンサーとして踊るご自分の身体を出発点に運動と身体の関係に興味を持つことで研究の道に専念することとなり、現在は本学の教員として日々教育・研究活動に励んでおられます。水村先生がこれまでに取り組まれた研究内容についてもご紹介いただきました。

初めに、水村先生は「ダンスを観たことがありますか?」、「ダンスをしたことがありますか?」と受講者に問いかけました。受講者の反応は、「観たことはあってもしたことはない」、「今はしていない」という様子でした。引き続き、水村先生は写真を見せつつ、日本三大盆踊り、バレエにコンテンポラリーダンス、社交ダンス、パリ五輪正式種目になるブレイキンなど、ダンスの種類の豊富さについて紹介されました。「ダンス」を観て言葉がわからなくても感動し涙することがあるのは、「ダンス」がグローバルに分かり合うことができる「ノンバーバル」なものだから、という水村先生の説明はとても腑に落ちるものでした。

さらに、「ダンス」は認知症予防にも活用されており、音楽に合わせて踊ること、身体接触を伴いパートナーやグループで楽しみながら踊ることは、ウォーキングや筋力トレーニングよりも認知症リスクを低減するとの説明がなされました。「ダンス」は相手の動きを見る、感じる、など「マルチタスク」であり、それを行うことが認知症予防につながるとの説明は大変納得でき、運動を楽しむことが心と体の健康につながることのすばらしさを感じました。

さらに、「女性の一生と健康とダンスの関係」について、女性のライフスタイルと身体の変化、加齢に伴う身体の変化、中高年女性の心身の変化、高齢期女性の健康とフレイル(虚弱)などの側面から図表を用いた丁寧な説明がなされました。体力は加齢に伴い目に見えないレベルで徐々に低下してそれにより心が変化し不健康になる、一方で加齢に伴い活動量をあげることで心がポジティブになり元気で健康になる、それによってその先の生活も変わる、との水村先生のお話は、受講者全員の心に深く刺さりました。

講義の最後は、様々な種類の「ダンス」について動画を用いて動きの特徴などを説明いただき、前半は終了しました。

休憩をはさみ、後半はダンス実践です。椅子に座った状態で身体を伸ばすなどのゆったりした運動からスタートしました。腕や体、脚を伸ばし、上げ、回して徐々に身体がほぐれて温かくなったところで椅子から立ち上がり、立った状態での運動に移りました。脚や腕を大きく広げ、体全体を伸ばしてひねって、と全身を動かしたところで今度は音に合わせて動く運動を行いました。最後には音楽に合わせたダンスを水村先生、受講生、事務局メンバーの全員で行いました。ダンスを終えた皆さんからは、運動を誰かと一緒に心から楽しみ、心身ともに健康になるとはこういうことなのか!といった表情を見ることができました

受講者の皆さんは、コロナ過で自宅にいる機会が多く、なかなか体を動かす気持ちになれず運動不足を実感している、誰かと一緒に体を動かしたい、という理由で受講をされている方が多く、このたびの講義・ダンス実践を楽しみにされていました。ダンスを終えた後に一人ずつ感想を述べましたが、ダンスの科学的知見を得つつ、それを自身の体をもって体得できたという喜びや楽しさを語る様子が印象的でした。

受講者からは「根拠に基づいた論理をわかりやすく説明戴けたこと、実際に身体を動かすことで更に実感しました。楽しく身体を動かし、健康維持出来れば最高です。楽しめるダンス、続けたいと思います。」、「実際に体も動かせてとても楽しく受講できました。」などの感想をいただきました。

コロナ禍においては身体を動かす機会がどうしても減少します。しかし、コロナ禍を乗り切るためにも健康は大切であり、かつ、アフターコロナで元気に活動するためには健康を保ち続けることが大切です。健康を保ち続けるためには、自分の好きな運動を見つけ、楽しめる状況を作り、ずっと続けることが大切だということを実感しつつ学んだ3時間でした。

文責 内藤 章江(グローバルリーダーシップ研究所 特任講師)