2022年3月5日(土)講義:13:30~16:40
大瀧 雅寛氏(お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系 教授)

1年間はあっという間ですね。早いもので、2021年度科目最終回を迎えました!専門柄、水をめぐる世界の戦いに興味があるという実施委員長の小林先生も、「昔のプロレスで言うと『メインエベント』の回」の表現されていました。
その小林先生に、剛腕のピッチャーでいらしたと紹介された大瀧先生、「4半世紀も昔のことで忘れました(笑)」とご登場下さいました。

最初は「水とはものすごく特殊な液体である」というお話でした。他のものをよく溶かすという性質も、他の液体にはあまりない特徴だそうです。
そのような特殊な液体が周り中にあって、蛇口をひねると(最近は「持ち上げる」と)出てくるというのは、考えてみると不思議な感じです。

人間の生命維持に必要な1日の水量を教えていただいた上で、日本における水の現状についてご説明いただきました。砂漠が緑化していく所もあるくらいなので、なんとなく水の豊富な国だと考えていましたが、平均降水量の変化や(「男女の平均身長の間くらいが年降水量」なのですね)、地形による河川の特性などのデータを示して教えていただくと、どうやら思っていたほど水資源に恵まれているわけではないようです。
水源が近いというのは安心なところですが、水を「湯水のように」使って良いという認識は改めなければならないようです。

生活用水については、使用の内訳や地下水利用の事例、水道の排水量の時間変動(面白いテレビの生放送が、イレギュラーな排水量のタイミングを引き起こすとは!)などをご解説いただきました。「生活用水量の減少の要因はなんでしょうか?」と(昭和の時代を知る年長者に有利な?)クイズも交えていただき、受講者の皆様は楽しみながら答えていらっしゃいました。
また農業用水(小林先生が興味のある「水争い」の話題も)、工業用水(「日本の4大公害のうち3つが水汚染」とは考えてみれば怖いことです)の減少についても、政策や技術の向上などの理由を挙げて分かりやすく示していただきました。

「それでは、今日ご参加の皆さんはどれだけ水を使っているのでしょうか?」ということで、各用途における使用量の目安を教えていただいた後、先生からチャットでお送りいただいた計算表に各自で入力して、大瀧先生にまとめてご発表いただきました。
名前を伏せての発表でしたが、使用傾向からそれぞれのお家の様子が透けて見えてくるようです(各国のデータも比べてみると、お国事情が見えてくるとのお話でした)。「夏と冬で使用傾向や量に違いが出ることもありますか?」などといったご質問も活発に出ました。

休憩を挟んで後半は、世界各国における生活用水の内訳のお話から始まり、節水の政策や引用可能な水の開発などについてご紹介いただきました。
大瀧先生の調査された、雨水も利用した途上国の水源の話題では、質も量も不安定なものの用途ごとに水を使い分ける発想が巧みなことで、「地域に合った水供給システムの発展がある」というお話が目から鱗でした。臨機応変、当意即妙な水の使い方は、災害時に応用可能なアイデアのようです。

東日本大震災、熊本地震の際の断水のデータからは、震災後の水道復旧が比較的迅速に進んだことを解説していただきました。一方で水道施設の耐震化があまり進んでいないことや、災害時には望むべきQOLと必要水量を合わせて考える必要のあること、それにもしもの時の応急給水施設を把握しておく必要のあることも教えていただきました。
日頃はたやすく手に入る綺麗な水、万が一に備えてその価値と非常時の手段を見直しておきます。

水の質について(安全な水とは)のパートでは、毒性に関する基礎知識から説明していただきました。いったいこの症状や、曝露(摂取)の状況は、慢性と急性のどちらなのか、という判断がまず重要なようです。ここでも「毒性物質の摂取量と発生率の関係を示す正しい図は?」などと、指名して、あるいは二者択一形式でのクイズが続きます。緊張感のある楽しい今回でした。
「発がん性物質が基準値の2倍含まれている水を飲んでしまった」という時に、自分の発がん確率をどう判断すべきか?という身近に起こり得るちょっと怖いクイズでは、水道の基準策定の基本コンセプトから丁寧に紐解き、受講者と事務局の面々を少し安心させて下さいました。リスクを冷静に判断することが重要とのお言葉、肝に銘じます。

最後に、災害時には特に要注意の、急性の症状を引き起こす水中の病原微生物について取り上げていただきました。水質の話ではなんでいつも大腸菌の有無が取り沙汰されるのだろう、実はかなり危険な菌なのかなと思っていましたが、あれは指標微生物なのですね!
水の安全性についての指標の誤った使用例や、水処理(消毒、濾過)の歴史と効果のお話も面白かったです。河川、湖沼中の有害物質も水道水と同じレベルに保たれているとは 、相当汚いと思い込んでいたので意外でした。

受講者の皆様からは、「日本のきれいな水は、水道局の管理の賜物であると知るとともに、災害時の対策として、知識を付けることの重要性も学びました」、「日本の河川などの水はどこも基準値レベルで安全と分かり、非常時にはその意識をもって対応したいと思いました」などとご感想をいただきました。

大瀧先生、クイズや指名形式の対話を随所に挟み、記憶に新しいニュースやご研究の一部も例として取り上げながら、分かりやすく楽しく教えていただきありがとうございました。今回受講された中にはご家族がマンションの災害用水に関わっているという方もいらっしゃいましたが、その方のみならず、水が不可欠の我々人間全員にとって有用な内容でした。
リアクションペーパーで寄せられた「ダムがあるのは雨が降りやすい場所?」、「山で遭難した時、数日であれば雨水を飲むのも有効?」のご質問にも早速丁寧にご回答いただきありがとうございます(なるほど、そうなのですね)!
日常の綺麗な水に感謝しつつ、災害時に水を確保して効率よく安全に使う方法にも注意を向けていこうと存じます。2021年度最後の「メインエベント」にご登壇いただき、ありがとうございました!

文責 森 暁子(グローバルリーダーシップ研究所 特任アソシエイトフェロー)