⑤6月12日(土)「ゲノム医療時代の健康管理と遺伝カウンセリング」
【講義内容】2003年に完了したヒトゲノム計画により、ヒトの全塩基配列が決定され、ゲノム情報のデータベース化やデータ共有が進み、ゲノム情報を診断、治療、予防戦略に用いるゲノム医療の開発が急速に拡がっています。ゲノム医療は医療革新の大きな推進力のひとつですが、未だ倫理的・法的・社会的課題(ELSI)が残されています。本講義では、ゲノム・遺伝医療に関する心理社会的課題に対応する遺伝カウンセリングを中心に、これからのゲノム医療について解説をします。(キーワード:ゲノム情報、ゲノム医療、遺伝カウンセリング、ELSI)
【プロフィール】1993年日本医科大学卒業、産婦人科医として臨床で研鑽を積む。周産期医療の中で、遺伝医療の必要性に気付き、臨床遺伝専門医として遺伝カウンセリングの普及に努め、京都大学遺伝子診療部勤務を経て、現在、お茶の水女子大学で遺伝カウンセラー養成にあたっている。日本遺伝カウンセリング学会理事・評議員、日本人類遺伝学会 評議員、日本遺伝カウンセリング学会と日本人類遺伝学会が共同認定する認定遺伝カウンセラー制度委員会委員長を務める。
【プロフィール】看護師、認定遺伝カウンセラー®。看護師として臨床で勤務後、ゲノム解析研究のコーディネーターを経験する。遺伝医療の発展にともなう遺伝専門職の重要性に気づき、遺伝カウンセリングについて学ぶ。お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻遺伝カウンセリング領域 博士後期課程単位修得退学。修士(学術)。2020年4月より現職。
⑥6月26日(土)「植物油と健康~氾濫する食情報に流されないために~」
藤原 葉子[お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系 教授]
【プロフィール】1981年お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業、千葉大学医学部代謝第二内科実験助手を経て、お茶の水女子大学大学院に戻り、博士(学術)の学位を取得。豪Baker医学研究所、国立健康・栄養研究所でのポスドクの後、1997年にお茶の水女子大学生活科学部講師に着任、現在教授。ヒューマンライフイノベーション研究所長を兼担。専門分野:栄養化学、特に脂質栄養と生活習慣病の関係
【講義内容】油はカロリーが高いため嫌われがちであるが、我々が生きていくために必ず摂取しなければならない栄養素の一つである。一方で市場には多くの新しい油が出回り、様々な情報が錯綜しているため、消費者はますます混乱しているのではないだろうか。食品学的観点から種々の食用油脂の特徴とその生理作用を概説し、日本人の食生活の現状や最近の研究結果を紹介する。健康のためには、どのような油をどれだけ摂取すれば良いのかを考える。(キーワード:脂質栄養、脂肪酸、ビタミン、ポリフェノール、生活習慣病)
⑦7月3日(土)「すまいのデザインと社会」
元岡 展久 [お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系 教授]
【プロフィール】博士(工学)。建築家(一級建築士)。お茶の水女子大学キャンパスにおいて実現されたプロジェクトには、消費生活協同組合購買部店舗の改修 (2019)、正門の復原 (2017)、大学学生寮SCC基本設計(2011)、実験住宅OCHA HOUSE(2009) があります。現在、子どもへの建築教育にも積極的に取り組んでおり、「建築おもちゃ」のデザイン開発もおこなっています。
【講義内容】「すまい」には、様々な社会の様相が写し込まれています。何気ない住宅の各部に、生き方、家族、公私、性別、健康、安全、美など、住人あるいはその時代・社会の価値観が現れています。身の回りの、ごく普通だと思っていたすまいが、違った意味を持って見えてきます。すまいのデザインを家族や社会のありようと関係づけて考えてみたいと思います。(キーワード:すまい、デザイン、家族、環境、住文化)
⑧7月10日(土)「都市の記憶、都市の想像力」
小林 誠 [お茶の水女子大学 基幹研究院 人間科学系 教授]
【プロフィール】平和研究、政治学、国際関係学。東京大学大学院博士課程単位取得退学後、立命館大学国際関係学部教授、横浜市立大学国際総合科学部教授を経て、2007年から現職。この間、メキシコ大学院大学、ジョンズホプキンス大学、ケンブリッジ大学で客員研究員。共著『公共政策への招待』『「国際政治学」は終わったのか』、共編著『グローバル・ポリティクス』『グローバル文化学』他。
【講義内容】都市はモダン社会の中核にあり、人びとのさまざまな体験や記憶を具象化する壮大な装置です。日常の労働や生活だけでなく、自然災害や戦争といった体験も刻み込まれています。他方、スマートシティ構想のように、未来への想像力の母胎ともなります。過去に描かれた未来都市のイメージ、現実の北京・ワシントンDC・メキシコシティ、未来都市構想などから、都市に現れる権力と多元的共生について考えてみましょう。(キーワード:都市、記憶の共有、権力、多元的共生)
⑨9月4日(土)「近代精神の器としてのピアノ」
小坂 圭太 [お茶の水女子大学 基幹研究院 人文科学系 教授]
【プロフィール】東京藝術大学附属音楽高校、同大学音楽学部を経て1987年同大学院音楽研究科修士課程修了。1985年第54回日本音楽コンクールピアノ部門入選、1989年第58回同コンクール声楽部門委員会特別賞。在学中より演奏活動を始め、ソロ・伴奏・室内楽等で古典から新作初演まで幅広く活動、《サントリー・サマー・スペシャル》、《「東京の夏」音楽祭》、NHKのBSプレミアムやFM番組にも度々出演。相愛大学音楽学部助教授を経て2003年11月にお茶の水女子大学文教育学部助教授に就任、2018年4月より現職。
【講義内容】1960年代の高度成長期日本で幼年期を過ごした自分達にとって、もはやピアノに対し他の文化圏の物という意識を持つ事はなかった。それは又、今振り返ると、日本のみならず西欧にとっても文化のターニングポイントとなった1970年を目前に、日本が明治以来西洋近代的枠組をほぼ倍速で駆け抜ける際の、追いつけ・追い越せといった動機付けが空疎なものになりかけた、束の間幸せな時期だったのかもしれない。本講座ではそうした意識を根底に、ピアノ音楽の歴史やピアニズムを考察します。(キーワード:ピアニズム、近代市民社会、進歩史観、グローバリゼーションとアイデンティティ、日本の洋楽)
⑩9月11日(土)「ダンスの魅力を科学する~運動を楽しむと健康になる~」
水村(久埜) 真由美 [お茶の水女子大学 基幹研究院 人文科学系 教授]
【プロフィール】お茶の水女子大学文教育学部舞踊教育学科卒業後、東京大学教育学研究科にてスポーツ科学を専攻。1998年よりお茶の水女子大学にてヒトの身体と動作に関する研究教育に従事。身体表現の自然科学的研究や幼児から高齢者までの身体諸機能や動作の変容、運動効果が研究テーマ。日本体力医学会評議員、日本ダンス医科学研究会代表理事、東京都スポーツ審議委員。元谷桃子バレエ団所属ダンサー。13歳と18歳の息子の母。
【講義内容】ダンスは、近年、認知症予防の効果が最も大きい運動として海外の研究で注目されています。ダンスという運動は、種類が多彩で、音楽も堪能でき、勝敗もなく、グループで行う楽しみもあるといった他のスポーツやトレーニングにないユニークさがあります。本講義では、ダンスの運動特性をお話ししたうえで、ダンスや、ダンスと関連の深いヨガやピラティスといったエクササイズの中から、ご自宅でも行える運動を一緒に行って、ご自身にとって楽しい運動と出会うきっかけができればと考えています。(キーワード:健康、運動、ダンス、姿勢、美しさ)
⑪10月16日(土)「遺伝子からみえる疾患のメカニズム」
由良 敬[ お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系、文理融合AI・データサイエンスセンター 教授、副センター長]
【プロフィール】1993年 名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻博士後期課程単位取得退学。同年名古屋大学理学部生物学科助手。1999年 博士(理学)取得。2002年 日本原子力研究所研究員。2005年 日本原子力研究開発機構副主幹。2008年 お茶の水女子大学教授、生命情報学教育研究センター長。2013~2017年 国立遺伝学研究所特任教授兼任。2017年 早稲田大学理工学術院教授クロスアポイントメント。現在に至る。
【講義内容】自分の遺伝情報が他人の情報とどのように違っているのかがわかる時代が到来しました。遺伝情報はDNAに書き込まれており、ひとりひとりのDNA分子はわずかに違っています。その違いが各人のどのようなところに影響しているのでしょうか?本講義では、現代生物学と化学の基礎をひもときながら、様々な例を通して、DNAの違いがもたらす各人の様々な違いを紹介します。(キーワード:ゲノム、DNA、タンパク質構造、バイオインフォマティクス、計算機)
⑫10月23日(土)「男女共同参画と途上国支援に関する科学・技術コミュニティの変容の事例」
森 義仁 [お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系 教授]
【プロフィール】北海道大学大学院薬学研究科修了、薬学博士取得後、1988年富山医科薬科大学附属病院薬剤師に就き、岡崎国立共同研究機構分子科学研究所助手、名古屋工業大学工学部助手、お茶の水女子理学部助教授を経て、2014年より現職、その間、開発途上国女子教育協力センター長、いずみナーサリー施設長、附属幼稚園長、男女共同参画学協会連絡会運営委員、文京区男女平等参画推進会議委員を務める。
【講義内容】科学・技術は、従来の専門家コミュニティー内に留まらず、様々な立場の人々の関心事にもなり、科学・技術コミュニティーは、21世に入り、大きく拡大し、また多様化してきました。今回の講義では、男女共同参画と途上国支援に関連し、科学・技術コミュニティーの変容について事例を紹介し、これからの科学・技術コミュニティーの有り様について一緒に考えたいです。(キーワード:ゲノム、ジェンダー研究者、NPO/NGO、アフガニスタン女性支援、女子中高生理系進路選択支援)
⑯2022年 1月15日(土)「サステナビリティを目指した遺伝リテラシー」
佐々木 元子[ お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系 助教]
【プロフィール】1993年日本女子大学化学科卒。98年横浜市立大学大学院満期退学、博士(理学)。㈶神奈川科学技術アカデミー、㈱明治製菓研究員。2010年お茶の水女子大学大学院遺伝カウンセリングコース満期退学。認定遺伝カウンセラー®、田園調布学園中等部・高等部非常勤講師、日本医科大学付属病院、横浜市立大学附属病院、お茶の水女子大学基幹研究院研究員・非常勤講師等を経て18年より現職。
【講義内容】近年、個人のゲノム情報を医療や健康管理に役立てようという、ゲノム医療への期待が高まっています。このゲノム情報を扱う場合、本来知りたかったこと以外の情報を知る、家族に影響することがあるなど、思いがけない状況に直面することがあり、正しい情報を伝え自己決定を支援する遺伝カウンセリングが大切です。身近な遺伝の話題について学び、皆さんで事例について議論し、遺伝リテラシーの向上を目指しましょう。(キーワード:遺伝リテラシー、遺伝カウンセリング、ゲノム医療)
⑰2022年 1月22日(土)「ヒトデとヒトでの生物学」
千葉 和義 [お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系 教授]
【プロフィール】東京工業大学理学部生命理学科助手(1990年)、お茶の水女子大学理学部生物学科助教授(1997年)、お茶の水女子大学理学部生物学科教授、サイエンス & エデュケーション センター長(2005年)、お茶の水女子大学 副学長附属学校園担当(2017~2018年)。生物学科の学生や大学院生たちと、ヒトデの減数分裂と受精機構(発生生物学)を研究すると同時に、理科教育と科学コミュニケーションの振興活動に従事している。
【講義内容】海産無脊椎動物のヒトデは、ホルモンによって受精可能な卵になり、排卵(放卵)されて、海水中で受精する。ヒトにおいても、卵巣内の卵は、ホルモンによって受精が可能となり排卵されて、輸卵管中で受精する。ヒトデとヒトでの知見を合わせて紹介し、生殖医療についても議論したい。(キーワード:受精、減数分裂、発生、生殖医療)
⑲2022年 2月19日(土)「身近な地域で災害に関する地図を作ってみよう」
長谷川 直子 [お茶の水女子大学 基幹研究院 人間科学系 准教授]
【プロフィール】地理学を専門とする。著書は「世界の湖沼と地球環境」(古今書院、分担執筆)、「地理×女子=新しい まちあるき」(古今書院、監修執筆)、「地理女子が教えるご当地グルメの地理学」 (ベレ出版、共著)、「今こそ学ぼう地理の基本」(山川出版社、編集執
筆)「発見しよう! つくってみよう! まちの地図 全3巻」(河出書房新社、監修)など。
【講義内容】災害時の地図として、ハザードマップが各自治体で作られています。そもそもハザードマップはどういうものなのでしょうか?この講座では主に水害のハザードマップをとりあげ、まず概略について簡単に解説します。「ある想定雨量で」作られている水害ハザードマップを参考に、その想定と違う雨量になった時にどういう被害が考えられるのか。受講生の身近な地域を事例に、各自で地図を作り考えてみましょう。(キーワード:ハザードマップ、水害、地理、地図)
⑳2022年 3月5日(土)「平時と災害時における水の確保(質と量の両面から)」
大瀧 雅寛 [お茶の水女子大学 基幹研究院 自然科学系 教授]
【プロフィール】1995年3月東京大学大学院工学系研究科博士課程を修了後、同年4月に同研究科の助手。1997年講師。1999年4月より現お茶の水女子大学・助教授。2012年に同教授、現在に至る。途中、2000年8月から2001年3月に南フロリダ大学にて客員研究員。専門は環境衛生工学。特に水処理における消毒技術が専門。他にも国内外の都市用水需要予測や途上国の家庭排水処理に関する研究も行っている。
【講義内容】現在の日本において、必要な水を質・量ともに確保することは、平時においては当然のこととなっているが、それを可能にしている自然条件・社会条件・技術的背景を併せて説明するとともに、災害などの非常時においてどのように確保できるのか、またするべきなのかを解説する。特に人の健康に関するリスク評価の視点から考えることで、客観的に判断する方法についても説明する。(キーワード:水源、水質、水処理技術、リスク評価)